
近年、平均寿命は100歳になるという予測が出ていますが、少なくとも寿命は延びていくことは確実です。
しかし、長寿であることと健康であることはイコールではないわけで。思うようにならない身体をかかえて生きていくことは大変です。
いわゆるアンチエイジングが必要になるわけですが、真っ先に思い浮かべるのは「抗酸化」ではないでしょうか。
抗糖化、抗炎症も入ってきますが、酸化ストレスに対抗する抗酸化はアンチエイジングの基本になります。
抗酸化作用の優れたスーパーフードやサプリメントなどに頼りたくなりますが、基本は食生活の改善になると思います。
しかし、将来起こる不都合のための努力は、リアリティがないため続かない傾向があります。身に覚えがある方は少なくないでしょう。
そこで「抹茶」を習慣として取り入れてみてはという提案です。抹茶はおいしいだけでなく抗酸化物質の宝庫でもあります。
特別なことをしなくても食後の1杯や休憩など日常生活にビルトインできるので習慣化しやすいというメリットもあります。
活性酸素
老化を防止し健康を維持するうえで活性酸素は大敵です。
細胞の遺伝子が活性酸素によって傷ついたり、細胞膜の脂質や血中の悪玉コレステロールを酸化したり、シミやシワの要因になるなど人体にとって悪影響を及ぼします。
活性酸素は体内に入ってきた病原菌を攻撃するプラスの役割もありますが、増えすぎてしまうと人体を構成する正常な細胞まで傷つけてしまいます。その結果、さまざまな不調や病気を引き起こす要因になるわけです。
そんな活性酸素ですが、残念ながら特別なことをしなくても発生しています。ミトコンドリアで栄養をエネルギーにして燃やすとき、炎症が起きたとき、紫外線を浴びる、喫煙、過度な運動または運動不足、偏った食生活、各種ストレスなどなど。
つまり生きていくとこうことは活性酸素によって細胞がダメージを受けたりして老化していくということになるわけです。
アンチエイジングのためにはこの活性酸素の害を抑える必要があります。それが「抗酸化」です。抗酸化物質により活性酸素を水と酸素に分解して無害化することができます。
抗酸化物質はさまざま種類がありますが、抹茶には強力な抗酸化作用がある成分がとび抜けて含まれていることが分かっています。
抹茶に含まれる抗酸化物質
カテキン
カテキンは緑茶に含まれる成分として有名です。強い抗酸化作用のほか、脂肪の燃焼促進、悪玉コレステロールの低下など広範な生理活性効果があります。
もちろん抹茶にもカテキンは豊富に含まれています。「抹茶は別の飲み物じゃないの?」と思われるかもしれませんが、緑茶とは製法や加工が違うだけで基本的には同じ茶葉からできています。
カテキンは実は単体の成分名ではなく、8種類に分類できます。そのなかでも「エピカテキン」「エピカテキンガレート」「エピガロカテキン」「エピガロカテキンガレート」の4種類は抹茶や緑茶にしかない特徴的な成分です。
なかでもエピガロカテキンガレート(EGCG)は最も強い抗酸化力があり、抗酸化物質として定番のビタミンCの80倍、若返りのビタミンといわれるビタミンEの20倍と桁違いです。
抹茶のカテキンのうち約60%を占めるのがこのエピガロカテキンガレートです。抹茶で飲めば緑茶では茶殻に残らずにすべてのカテキンを摂ることができます。
ビタミンC
ビタミンCは毎日多く摂りたい定番の抗酸化物質です。水溶性成分なので細胞の内外で抗酸化作用を発揮し、活性酸素などから人体を守ります。
水溶性のビタミンCはその酸化を防ぐための最前線の役割を担っています。例えば血液中の悪玉コレステロールの酸化を防ぎ、血管を良好な状態に保つ働きがあります。また、ビタミンC(酸化型ビタミンC)は血液脳関門を素通りして、脳の神経細胞を活性酸素から守る働きもあります。
ビタミンCは抗酸化剤としてだけでなく、健康を維持するうえでさまざまな働きをします。その重要な働きのひとつにコラーゲンというタンパク質の生成です。
コラーゲンは細胞と細胞をつなぐ糊のような役割を果たしており、不足すれば肌荒れや関節痛、出血しやすくなるなど全身的に現れます。
美容に関連するならビタミンCは美肌や美白にも効果的です。ビタミンCはメラニン色素の生成を抑えたり、すでにできたシミの脱色作用もあります。
シミ対策できる医薬品にはL-システインのほかビタミンCが主成分として配合されているので重要であることがわかります。
ビタミンE
若返りのビタミンといわれるビタミンEはカテキンと同様に強力な抗酸化作用があります。
細胞膜の主成分は脂質でできていますが、脂溶性のビタミンEは細胞膜に埋め込まれており、細胞を活性酸素から守っています。
つまりビタミンEは細胞膜のなかに入ってきた活性酸素から酸化を防ぐことが可能で、水溶性の抗酸化物質にはできない芸当になります。
さらにビタミンEはコレステロールの酸化を防ぐ働きがあります。抗酸化力を失ったビタミンEはビタミンCによって再び活性型に戻って抗酸化作用を発揮します。
ビタミンA
抹茶に含まれるβ-カロチンは体内でビタミンAに変換されるプロビタミンAです。緑黄色野菜に多く含まれる成分で、皮膚やのど、消化管などの粘膜を保護する働きがあります。
皮膚の細胞の入れ替わりであるターンオーバーを促進したり、ヒアルロン酸を増やして肌のうるおいや弾力を保つ働きもあり、美肌にも役立ちます。
β-カロチンは体内で必要量だけビタミンAに変換されるため、摂りすぎても過剰症の心配がない利点があります。
変換されなかった分は体の中で強い抗酸化作用を発揮します。
コエンザイムQ10
コエンザイムQ10は強い抗酸化作用があるだけでなく、細胞内のミトコンドリアがエネルギーを生み出すためのスパークプラグのような働きをします。
体内で作り出すことができるのですが、加齢とともに減少していきます。生命維持に必要なエネルギーを生み出すことができなければ、細胞の機能低下を起こしたりして老化や病気につながります。
しかし、食事から得られるコエンザイムQ10の量は少なくまかないきれない成分です。抹茶を飲むことで脂溶性のコエンザイムQ10を丸ごと摂取することができ、摂取量を増やすことができます。
そのほか、細胞膜を酸化から守ったビタミンEを再び抗酸化力がある状態に戻す働きがあり、抹茶は相乗効果を発揮して活性酸素を抑えることができるわけです。
抹茶で効果倍増
抹茶に含まれる抗酸化物質をみてきましたが、抹茶の特徴的なところはこれらの抗酸化物質が補いながら働く点です。
活性酸素から細胞を守り抗酸化作用を失ったビタミンEを、ビタミンCとコエンザイムQ10は、元の抗酸化力のある状態に還元します。
ビタミンA、C、Eは、美肌づくりにおいて必要な成分でまとめてビタミンACE(エース)と呼ばれます。その栄養成分を抹茶はすべてカバーしています。
また、抹茶のすぐれた点は緑茶と違い栄養をまるごと摂取することができることです。
緑茶では茶葉をお湯で浸出して成分を引き出しますが、茶殻に4~6割程度の成分が残ってしまいます。茶殻まで食べればすべての成分を摂取できますが、実際に実行するとなるとなかなか大変です。
強力な抗酸化作用のあるエピガロカテキンガレートは抽出するのに最適な湯温があります。70~80℃がよいのですが、抹茶であれば温度を気にする必要がありません。夏はアイスにしたり、ヨーグルトに混ぜたり、スイーツに使うなど好きなように取り入れることができます。
ただし、残念な点もあります。それはビタミンCの量が少ないのです。抹茶100gにおけるビタミンCは確かに豊富に含まれているのですが、抹茶1杯あたり2~3g程度の場合、ビタミンCは1.2~1.8mgほどしかありません。1日のビタミンC摂取の目安は100mgですのでかなり少ないといえます。
そうはいっても、少量とはいえビタミンCを含んでいますし、相乗効果の期待できる各抗酸化物質が抹茶には含まれています。抹茶を飲まないのはもったいないといえます。
デメリットを補う方法としては、ビタミンCを補充できる抹茶のアレンジドリンクやレシピという方法があります。またはじめからビタミンCを配合した抹茶飲料を飲む方法もあります。
ネスレの「ウェルネス抹茶カプセル」にはビタミンCが配合されています。各種ビタミン、ミネラルも豊富です。イチョウ葉エキスやグルコサミンといった機能性のある栄養成分が配合されたものもあります。抹茶をアレンジするのが面倒なら利用してみてもいいでしょう。
まとめ
抗酸化作用がたっぷりのスーパーフードというと、チアシードやキヌアといった海外発のものが多いため、日本人の食生活や習慣に取り入れにくいといった面もあります。特に和食好きだったり高齢の方はそうかもしれません。
その点、緑茶は食生活に取り入れやすいですし、抗酸化作用の強いカテキンが含まれています。ただし、脂溶性の抗酸化物質が摂取できないが欠点です。
抹茶は茶葉の粉末ですので抗酸化物質を丸ごと摂取できることにくわえて、それぞれの成分が相互的に働きながら抗酸化作用を発揮できます。
老化防止、アンチエイジングのために、または食後の落ち着ける1杯として抹茶を飲んでみてはいかかでしょうか。